菰野山の調査

菰野山の調査

昭和二年十月三十日、菰野村長辻正道は、東京帝国大学教授田村剛林学博士を招いて菰野山の景勝地利用と保存の方策について、調査を依頼しました。田村博士と区会議員らは神明橋詰の竹沢別荘を基地に湯の山の森林、渓谷の実地調査をすることになりました。

翌日は三の瀬の一本松から蒼滝、銭滑淵から北谷裏道をのぼり、藤内壁から御在所ヶ岳頂上付近を調査し、帰路は田子地の百間滝、一の谷、長石谷、大石 谷を巡り、三岳寺から三本杉、潜門谷からうそ倉谷までの調査を終えました。竹沢別荘での討論会で田村博士が指導した事項は次のような内容でした。

  • 湯の山駅より栃谷に至るホウロク谷は松の育成良好なり、このまま保存につとめること。
  • 三郷立(菰野富士)南の蔓原は風致を損なう嫌いあり、これを伐採すること。
  • 小竹谷見付けを鈍くぬぎ林とするは風致を害し、落葉と常緑の混交林とすること。
  • 西小路花屋旅館以西の道路は墓地付近まで自動車を乗り入れるべく改修の必要あり。
  • 羅漢石(鍾乳石)は砂防法に抵触せざる範囲で保護設備を加えること。
  • 御在所岳南北冷水付近の笹原に植樹は不可能にして防火に注意し植物の濫採を禁ずること。
  • 一の谷御嶽講社の碑は沿道より人目に触れざる地に建碑すること。
  • 渓流に棲むアマゴを保護する方策を講ずること。
  • 湯の山の汚物の処理は高野山の濾過装置を学ぶこと。
  • 藤内壁、百間滝をはじめ巨岩、怪石の特異の景勝を世間に紹介するため田山花袋氏のごとき文士に依頼し、その麗筆をかりて広く宣伝につとむる必要あり。
  • 菰野山頂に産するアケビ蔓などで細工物を作りみやげものにすること考慮の余地あり。